[神傳流游書]
此の游方は其の様如何にも静かにして、心体ともに寛やかにして柔らかなるを肝要とす。極草の游方をさして滄海一心の位といふ。此の游方一つより出でて変化活用窮りなきに至る。
先師に於いても草の游方を指して当流の極意とすると云はるる程の游方なれば意味の深きこと言語に述ぶる事能ばず。唯其の手順を云いて止むなり。手足の活用(ハタラキ)柔かにして水に浮みたるばかりの心持にて少しも水に逆らふ意なきをよしとす。其の活用高波をぐに徳あり。浪静かなる時は、常の游方に変る事なし。波高ければ大概真向きの心持にて少し立体になり、左右の手ははがい伸にも等しく左右に掻き分くる様に遣ふ可し。是等の事は示すにも及ばぬ事なれども変化の一助ともなるべければ認め置くなり。浪立つ時は浪に乗り、打込むときは浪につれて下り、浪の順逆に応じ大小に遣ひ身体を労せずして游ぐ事此の游方の伝へなり。
水陸一致の位を悟り心胆のすわる上は仮令幾里の海上を游行するも疲るる事なし。若し心胆の据り悪しければ遂に気落ちして進退度を失ふものなり。水練の事はさておき左様拙き事にては大功を立つる事は能ふまじ。依て心胆を練るの修業を第一とすべし。
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静か、身体ともに寛やか
柔らか、 極草=「滄海一心」の位
変化活用が無限にある
神伝流の極意である
意味の深さは言語に表せない
手足柔らか、浮かぶ心持ち
水に逆らわない
活用形は高波を凌ぐのに有効
その場合
@正面向き Aやや立体 B手は左右対称掻き分け=はがい伸
C立ち上がる波に乗り D波とともに下がる
「水陸一致」を悟り、心胆据われば疲れる事はない。
据わり悪ければ度を失う。
心胆を練る修業を第一とせよ |