【水上草游方】
(すいじょう そうおよぎかた)

泳者:竹内千晴(仮名)
平成15年11月29日プール練習
於千葉県国際総合水泳場



約束事
その様は、如何にも静かで、心身ともにゆるやかに、また柔らかであることが重視される。
動作上の留意点
姿勢
・一方の肩を少し前に進めた平体である。
足脚
・左右の足をゆるやかにあおり、足先は合わなくてもよく、自然にまかせる。
膝も伸び切る必要はない。
手腕
・両手掌を下にして胸元に揃える
一方の手は前方から小円を(または「て」の字を書くように)
他方の手は肘を張らず、体下方向に大円を描き、水を押さえながら胸元に戻す。
ポイント
@静かにして、心身共にゆるやかであることが肝要である。
A変化活用は、その人の気分・体質・技量などによって修練工夫されるべきもので、それが自分のものとなって泳がれていること。

[神傳流游書]

 此の游方は其の様如何にも静かにして、心体ともにゆるやかにして柔らかなるを肝要とす。極草の游方をさして滄海一心の位といふ。此の游方一つより出でて変化活用きわまりなきに至る。

 先師に於いても草の游方を指して当流の極意とすると云はるる程の游方なれば意味の深きこと言語に述ぶる事あたばず。唯其の手順を云いて止むなり。手足の活用(ハタラキ)柔かにして水に浮みたるばかりの心持にて少しも水に逆らふ意なきをよしとす。其の活用高波をぐに徳あり。浪静かなる時は、常の游方に変る事なし。波高ければ大概真向きの心持にて少し立体になり、左右の手ははがい伸にも等しく左右に掻き分くる様に遣ふ可し。是等の事は示すにも及ばぬ事なれども変化の一助ともなるべければ認め置くなり。浪立つ時は浪に乗り、打込むときは浪につれて下り、浪の順逆に応じ大小に遣ひ身体を労せずして游ぐ事此の游方の伝へなり。

 水陸一致の位を悟り心胆のすわる上は仮令たとへ幾里の海上を游行するも疲るる事なし。若し心胆のすわり悪しければ遂に気落ちして進退度を失ふものなり。水練の事はさておき左様つたなき事にては大功を立つる事は能ふまじ。依て心胆を練るの修業を第一とすべし。

行間から抽出されるキーワード

静か、身体ともに寛やか
柔らか、 極草=「滄海一心」の位
変化活用が無限にある

神伝流の極意である
意味の深さは言語に表せない
手足柔らか、浮かぶ心持ち
水に逆らわない
活用形は高波を凌ぐのに有効
その場合
@正面向き Aやや立体 B手は左右対称掻き分け=はがい伸
C立ち上がる波に乗り D波とともに下がる

「水陸一致」を悟り、心胆据われば疲れる事はない。
据わり悪ければ度を失う。
心胆を練る修業を第一とせよ


※東京神伝流では、単に「草」という場合「はがい伸び」の「草」の位を指す。流速速く潮汐の影響や波浪もある隅田川河口では、「游方・草」は意味を持たなかったと考えられ、呼吸確保の観点で有利な「はがい伸び」の「草」が残ったと考えられる。




戻る



Copyright (C) T.Kodama 2003 All rights reserved Since2003/07/12.